2019年本屋大賞第二位 『ひと』小野寺史宜

 

もう秋ですね。そよ風が気持ちいい季節になりました。なんなんでしょうね、この秋しかない爽やかな空気感。夜には美しい虫の音。数日前は十五夜でお月さまもとても綺麗でした。そのうち金木犀が香ってくるんでしょうね。一年中秋でいいのにって毎年秋が来るたび思います。

 

今日はそんな涼やかな秋にぴったりの、素敵な本を紹介しますね。

以前から本屋に行くたびに気になっていた、小野寺史宜さんの『ひと』を読んでみました。

 

2019年の本屋大賞二位をとった作品です。

 

ひと

 

主人公は二十歳の大学生で、ある日突然両親が亡くなり、孤独になってしまいます。大学も通い続けることが出来ず中退。そんな絶望的ともいえる状況の秋から始まる物語です。

この主人公、しっかりしているのですが、とても控えめだし心が清らかなんです。すごく応援したくなる。そんな優しい主人公だから、利用しようとする人たちもチラホラ出てきます。でもそれと同時に、主人公を助けようとしてくれる人も沢山できてきます。

 

悩んだり大変な状況になった時ってついつい自分で抱え込んでしまったりしますよね。(男性は特に?)人間不信だったりプライドが高く弱みを見せられないと他人に頼るなんて、と思ったりします。話したって解決するもんでもないし、弱みを見せるだけだと。

親が亡くなって大学も辞めたら、頼れる人もいないし途方に暮れてしましそうです。でも助けの手を差し伸べてくれる人達はいて、それは主人公のちょっとした行動や人柄が招いたのかなと思いました。貧しいし、自分は大変な状況なのに、主人公は自分を卑下することもなく、ちゃんと誇りを持ちながら人に優しく出来るんです。現実ではそれってとても難しいと思うんですが、そういう善意がまた人をつないで、主人公を支えてくれるものになっていきます。 

 

勿論世の中いいひとばかりじゃない。だまされたり、見下されたりする事はしょっちゅう。マウンティングとか息をするレベルでする人もいます。

でも人は人と関わっていかなくちゃ生きていけなくて、人に支えられて、支え合って生きていくんだなと思わせてくれる本でした。